あたしにはオカルト好きの彼氏がいる。
Sという名前で、大学生だ。
たまに肝試しに廃屋にいってみようなんて言うことがあった。
あたしはそこまでオカルト好きではないので、乗り気ではないんだけど、まあ仕方ないのでついていくことがあった。ある日、Sから連絡が来た。
「今度の日曜、時間ある? 前から気になってた廃病院、探索しに行こうよ!」
Sにしては珍しく、かなりテンション高めだ。
あたしは少し怖気づきながらも、Sとの約束を取り付けた。
当日、待ち合わせ場所に行くと、Sはあたしの知らない男女を2人連れてきていた。
「この人たち、同じゼミの子。一緒に探索するって!」
Sは嬉しそうに紹介してくれたけど、
正直あたしは複雑な心境だった。
あまり大勢が好きじゃなかったし、それにつれてきた子たちはオカルト好きそうだったけど、あたしはそこまででもないしで。
まあ仕方ないから流されるままに一緒にいったんだけど。
廃病院に着くと、想像以上に不気味な雰囲気が漂っていた。
「よっしゃ、みんなで中に入ろう!」
とSが先頭を切って歩き出す。
他の2人も興奮気味に続いていった。
廃病院の中は暗くて、なんか見慣れない器具があった。
正直こわい。
「なんかやっぱ不気味だねー」
そんなことを言いながら進んでいく。
別に何が起こるでもなく、一通り歩き回った。
「1階はこれで全部かー」
Sがそうつぶやく。
「2回にも上ってみる?」
Sの連れてきた人たちが聞いてくる。
「まあ別にいいけど」
そういって引き続き調べてみることになった。
正直いって、もう帰りたかったんだけど。
いった通り、そこまでオカルト好きでもないし。
で、古くなった階段を上って二階にむかう。
階段はすごいぎしぎしいってた。
2階についたとき、
「あれ? なんか……」
連れてきた子の一人(以後K)がボソッとつぶやく。
「なんか声しない?」
そういったが、あたしには全く聞こえなかった。
まあ雰囲気だしたいんだろうなって思って、あたしは、
「えー気のせいじゃないー?」
とか適当なこと言ってた。
だって実際に何も聞こえないし。
「でも……」
とKは不気味な何かが見えてるふうでいる。
本当にオカルトとか好きだなあー。ってさして興味のないあたしはぼんやり見てた。
「いや、やっぱり何か……」
しつこいなあ。いい加減うんざりしてきてた。
でもKはやっぱり何かにおびえてるような感じでいる。もういいってー帰ろうよーって、言い出そうと思った時だった。
「うわあああ」
Kが急に叫びだす。
「え?どうしたの?」
Kは泣きじゃくりながら、目の前にいないはずの何かを指差している。
何かが見えてるのだろうか。
「ちょっとSこれやばくない?」
「うお、なんだってんだよ」
Sもあわてている。連れてきてる男の方もあわてているようだった。
「あああああ」
悲鳴のような声をあげるしか、
しなくなったので、Kを廃病院の外に連れ出すことにした。
早く帰りたいとは思っていたが、こんなかたちで帰る羽目になるとは。
それで車にのりこんで、廃病院の敷地から逃げるように出ていく。
車にのってる間にKは気を失っているようだった。
それから。
Kはどこが外傷があるわけでもないけど病院に連れて行った。検査をしてみてもどこも悪いところもない。
ただ精神がおかしくなってしまったのか、まともな反応をしめさないようになってしまったらしい。
それからSの連れてきた男のほうも連絡をとらなくなってしまい、今はどうなっているのかわからないそうだ。
Kが何を見たのかは知らないが、そんなに気のおかしくなるものが見えてしまったのだろうか。
それとも元々なにかおかしかったのだろうか。あたしは全く何も見えなかったので何もなかったが。
もしKの見た何かがあたしにも見えたら、あたしも同じようにおかしくなってしまったのかな。
そんなことを考えるとぞっとする。
ちなみになんだが、Sともその件をきっかけに別れている。オカルト好きなSには、もう付き合ってられないとも思ったし、あわないところもいろいろあったし。
別れるときに、
「あんまりへんなとこ行かないようにしなよ」
とだけ忠告てきなものをして別れた。ほんとにSとはそれっきりだ。
そんなこともあって、そのSもそうだし病院に入ることになったKも、今はどうしているのか全く分からない。
ただまあ、変な場所なんていくもんじゃないなあとは思った。