不気味な絵画

友達から聞いた話。

その友達は、絵画が趣味だった。

随分しゃれた趣味だなと思ったが、その友達(以後Aとする)は、

「そういや、前に不気味な絵を見たことがあった」

と言い始めた。

オカルトに興味があった俺はどんな絵なのか聞いてみた。Aはその絵を見たのはある地方の小さなアートギャラリーでのことだったと言った。

そのギャラリーは普段はあまり知られていない作家の作品を展示していることで知られていたが、Aが訪れた時には、特別展示として

「呪われた絵画コレクション」

と銘打たれた展示が開催されていた。

「なんか思い切ったタイトルだな」

「それはほんとにそう思う、でもまあだから興味が出てきたんだけどさ」

Aはそう言いながら話を続ける。

Aはそのギャラリーを見て回る。

まあどくろとか、幽霊っぽいのとか、不気味な絵が並んでいたらしい。確かに呪われてそうっていうか、こんな絵を持ってたら、気分おちこみそうだなーとか。

そんなこと思いながら見て回っていたらしい。中でも、Aの目を引いたのは、一枚の絵画だった。それは、一見するとただの風景画に見えた。しかし、よく見るとその風景の中に異様に歪んだ人影が描かれていた。人影は何かに苦しんでいるようで、絵を見ていると不快な感覚が湧き上がってくる。絵の前に立つと、まるでその人影から強い怨念が伝わってくるようだったという。

Aがその絵についてギャラリーのオーナーに尋ねると、オーナーは顔色を変えた。

その絵は数十年前にこの地域で起きたある事件に関連していると言う。絵の中の人影は、

その事件の犠牲者をモデルにしたものだった。そして、その絵を手に入れた人間は、

不幸な出来事に見舞われるという噂があるとか。
オーナーはさらに、実際にその絵を購入した数人が奇妙な事故や突然の病で亡くなっており、それ以来、誰もその絵を手に入れようとしなくなったと語った。

絵は何度か売りに出されたが、結局、ギャラリーに戻ってくることになるそう。

オーナーとしても絵は売りたいので、そういう不気味なことが起こるとしってても、このギャラリーに並べているそうだ。

まあ、不動産とかなら事故物件として、告知しとかないといけないだろうけど、絵画なら別に売っても問題もないだろうし。

オーナーもそんな噂がありながら、売り物として並べるのは、悪いと思っていたけど、実際に呪いなんてあるはずもないだろうって感じで、この絵を扱っているようだった。

「それでその絵はどうしたの?」

「んー買ってみた」まじかよ。

そんな不気味な絵をAは買ったらしい。物好きだなーとか思った。

そもそもお金を出して絵画を買おうということすら、したこともないし。

よく理解できない趣味ではあった。

「なんか怖いこと起こったの?」

「どうだろう」

Aが言うには特に何も起こってないらしい。

ただ、その絵をずっと見ていると、なんだか幸せというか、満たされる感覚があるようだった。

「なんか夢中になってみちゃうんだよな」

Aはそう言っていた。

俺には全く分からない。そんな話があったのが3か月くらい前の話だったと思う。

なんでこの話を書いたのかというと、実はAが亡くなったからだ。

その間に何回かAの家に遊びに行くことがあった。その絵は異様な雰囲気を放っていた。

壁にかけられたその絵の前に立つと、ふと寒気がしたり、後ろから誰かに見られているような気がする。でもAは

「気のせいだよ」

と笑っていた。

実際、その後もAがなにか怪我をしたり、具体的な不幸があったわけでもない。それが逆に、この絵に何か特別な力があるのではないかと思わせた。そして、Aが亡くなる1週間前。

「最近、ちょっと寝られなくてさ。その絵、夢に出てくるんだよ」

Aはそう言っていた。夢に出てくるというのは、

どういうわけか、その絵が自分に語りかけてくるような夢だったらしい。

内容は覚えていないけど、目覚めた時の感覚はとても不快で、

不安が残るみたいだった。

「でも、なんかめっちゃリアルでさ。起きても何かに引っ張られるように、その絵を見に行っちゃうんだよな」

不安そうに話すAの様子を覚えている。夜でも不意に目が覚めて、

その絵をじっと見てしまうそうだ。

Aの死因は、突然の事故だった。居眠りの事故だ。

Aの運転でドライブをしたこともあったが、居眠りするような感じではなかったと思う。

寝不足でも運転中にぼんやりするようなことはなかった。

今回は、こらえきれないほど、体が疲れていたんだろう。

ずっとあの絵を見ていたんだろうか。俺はAと仲が良かったこともあって、

Aの部屋に遺品を見に行くことになった。家族の人からも頼まれたのだ。

そして、その絵画を見る。

俺は絵画なんて大して興味がない。でもその絵画を見ていると、

なんだか目が離せなくなる気がした。俺は怖くなった。

その絵画は家族のひとたちに送ることになるが、俺はAの家族には何も告げずにその絵画を捨てることにした。

燃やしてもよかったけど、燃やせるような場所もないし、その辺で火をつけるわけにもいかないし。ゴミ捨て場に絵画を捨てる。

とくに何が起きるわけでもなく、普通に捨てることができた。

ただ、その絵画がなんだか無性に見たくなってくる。

持っている間も、捨てた後も、なんだかやけに気にかかる。俺は絵画なんてよくわからないけど、

それでも気になるのだ。

絵画に興味があって購入したAは、もっと頭から離れなかったんだろう。心に残るっていう意味では、立派な絵画なんだろうが、Aがこんなことになってしまった今となっては、確かに呪われてると思えて仕方なかった。

とまあ、こんな感じのことがあった。

オカルト系は好きだけどAがこんなことになってしまったので、最近はあまり興味がわかない。

タイトルとURLをコピーしました