俺が子供のころに体験した怖い話。
小学校6年くらいだったはず。
学校の裏に山があったんだよ。
まあよくある話で、いやよくあるかはわからんけど、山には近づくなって言われてた。
学校の先生とか親とかも、近所に住む人は近づくなっていうふうにいつも言ってた。
でもまあ俺も話を聞かない子だったから、山に入りたくなるんだよね。
小学校6年くらいだと、そこそこ知恵もついてきて、その話も危ないから近寄るなってだけで、別に気を付けてればなんもないんだろうなって、思ってた。その学校の山いがいにも、森だったりはあって、何回か山の中で遊ぶこともあったから、その山で遊んでも、別に大丈夫だろって思ってたんだ。
それで、夕方くらいかな。
友達あつめて、その山に突入しようってなったんだよ。
入口には柵っていうか立ち入り禁止の看板とかあったんだけど、そこを無視して入ろうとしてた。
でもそこで、
「こらっ! なにをしてるんだガキども!」
って怒られたんだよね。どうもたまたま居合わせた人が怒ったとかじゃなくて、
見張りみたいなことしてるみたいだった。まさか人が見はってるなんて思わなかったから、びっくりした。だってほかの山とか森の入り口とか普通に入れてたしさ。
なんでこの山だけ人がいるんだって思ったんだよね。
そこで、普通の子供ならあきらめるんだろうけど、俺たちはあきらめなかった。
ていうかむしろ興味がわいてきちゃった。何としてでもこの山に入ってやるとか思っちゃったんだ。
今思えばこの時にやめておけばって思ってるけど。俺たちはなんか暇があるたびに、
その山の周りをうろつくようになった。
放課後、夕暮れ時になると、必ず俺たちはあの山のふもとにいた。
「今日こそ、何か見つけるぞ」
とか思ってた。
まあやっぱり見張りの人が誰かしらいて、怒られてたんだけど。何回か続けてたある日、さすがにいつも一緒にいってた友達も、
「もういいんじゃね?」
って感じで飽きてきた感じがあったんだよね。
まあ小学6年なんて何をしてても楽しいとしごろだし、遊ぶことなんてたくさんあったしで。でも俺はなんかやけにムキになっちゃってて、
「じゃあ俺だけで行くからいいよ」
って感じで俺一人だけでいくことになっちゃったんだ。
心細かったけど。それでまた、山の入り口に行ったんだよ。でも、見張りの人もいるだろうし、どうせまた見つかっちゃうなーって思って、何とかならないかって考えてた。
「ぼく、道を知ってるよ」
どきっとした。
いきなり声をかけられたんだ。その子は多分おれと同じくらいのとしだった。
この辺で見たことがない子だった。
「え? みちって?」
俺はいきなりすぎててんぱってたんだけど、あたふたしながら聞き返す。
「見張りを避けて山の中に入る方法があるんだ。こっち、来て」
声は明るいけど、なんか不気味な雰囲気があった。
俺はだまって彼についていく。
何でかわかんないけど、この時は疑いもせずについていった。その道はやぶの中をつっきる獣道だった。
でも確かに誰にもばれないように思えた。見張りの人もいなさそうだ。
「なんでこんな道しってるの?」
俺は聞いてみたが、その子は聞こえていないのか、くさやぶの中を歩いていくだけだった。
心の中で何度も疑問が浮かぶ。でも足はその子の後を追ってた。
歩くこと数分、俺達は開けた場所に出る。真ん中には池っぽいのがあった。
なんかやけに水がきれいだ。
「ここなら、誰にも気づかれずにいられるよ」
「こんな場所あったんだ……」
俺はきれいな池と森に囲まれてる風景にあっけにとられていた。なんだかゲームの世界みたいでわくわくしていたと思う。
非現実的な光景だった。俺はその池に近づいてみる。
「なんでこんなきれいなんだろ、底が見えないけど、すっごい澄んでる」
と、そこで俺は足を滑らせる。
池の中に前のめりに突っ込んでしまった。
「うわあああ」
這い上がろうとする。
だが足が何かにひっかかっていて上がれない。
「なんだこれ!」
いや、足をなにかにつかまれているようだった。
「たすけてえ!」
水に沈んだりを繰り返しながら、
必死に叫ぶ。視界におれを誘った子が見えた。
「ひひひひ」
その子はにたにた笑いながら、俺をじっと見ていた。
なんだこいつ。
不気味なやつのいうままについてきたことを後悔していたがもう遅い。
おれは、その子の不気味な顔を見ながら意識が遠のいていくのを感じた。目がさめると病院だった。
「起きたぞ!」
おれが起き上がったのを見て、
部屋にいた人が、声を上げて誰かを呼びに行った。
「え? おれなんで……」
しばらくぼーっとしていたが、あの池での記憶がよみがえってきた。そうだ。
おれおぼれて……。
病院にいるってことは助かったのか?
それから医者っぽい人がやってきて、
「とりあえず大丈夫そうですね」
となんか検査やらか知んないけど、それっぽいことしたあとに、
部屋をでていった。親とかが来ていて、心配していたようだった。「
なんであれだけダメって言われてたのに行ったの!」
母さんにすごい怒られた。
「すいません、私の管理が行き届かず……」
申し訳なさそうにしていたのは、
よく見張りをしていたおじさんだった。
「いえ、お気になさらないでください。うちの子がやったことですから……」
そのおじさんは、
「きみ、どこからあの場所にいったんだい?」
と聞いてきた。
「なんか、男の子がいて、その子に案内されて」
それを聞いておじさんは顔をしかめる。
「そうか、やっぱり……」
おじさんの知っている子供なんだろうか。それからおじさんは話をしてくれた。
あの池は昔から、どれくらいのころからなのかは、わからないけど、よくおぼれる子供がいたらしい。
で、その中でも、俺みたいに、助かる子がいたとき、
「男の子に池までつれていかれた」
と話すそうだ。
どこのだれかもしらない、だれも心当たりがないその男の子は、そのおじさんが子供のころから、噂になっていたらしい。
おじさんの友達も、池でおぼれてしまって、そのまま助からなかったそうだ。
「あれは、誰だったんだろ?」
「私もしらない、ずっと前からいたようだけどね」
俺が案内されて通った獣道もあとから考えれば不自然だった。
その子のあとについていったときはすいすいと通れたが、あの道は草が深くて、
とても通れるものではなかった。あの山には子供を誘い込む幽霊みたいなものがいる。
その時まで幽霊なんて信じてなかったけど、考えが変わった。
それからは、もう山に近づく気にはなれなかった。
さすがに懲りた。それ以来、水遊びも怖くていってない。正直、しばらくは風呂に入るのも嫌だったほどだ。水場に近づくたびに、あの子供のにやけている不気味な顔を思い出してしまいそうになる。以上だ。
俺が子供のころに体験した怖い話。それから、近づくなと言われる場所には絶対に近づかないようにしてる。肝試しなんかも誘われても絶対いかない。
いくなって言われてる場所はいかない方がいい。面白いことはなんもない。
ただ後悔することになるだけだ。