パチ屋にいかなくなった理由


俺がパチンコにハマっていたころの話だ。

社会人2年目くらいだったと思う。
仕事にも慣れてきて、
収入も安定してきて、
心も財布余裕出てきたとき。

暇だなーと思って、
ふらっとよったパチンコで、
大当たりしてハマってしまった。
まあきっかけの話はおいとくとして。

よく行くホームてきなパチンコ屋で、
いつも見るおっちゃんがいたんだよね。

おれもほぼ毎日いってたから、
結構話すこともあった。

「あの台は朝イチで出なかったらもうダメ、
この店は角から3番目がよく出る」
なんてことよく言ってたおっちゃんだった。

ある日、いつものようにパチンコ屋に行くと、そのおっちゃんがいつもの場所にいなかった。
「おっちゃん、今日は休みかな?」
そう思いながら、俺はいつものように台を選んで打ち始めた。

しかし、数時間が経っても、おっちゃんの姿は見えない。
そして、その日はいつもと同じように負けてしまった。
「んだよー、おもしろくねえなあ」
がっかりしながら、俺はパチンコ屋を後にした。
結局おっちゃんを見なかったが、
まあ1日くらい来ない日もあるか?
と思って、気にしなかった。

次の日、俺がパチンコ屋に行くと、おっちゃんが台に座っていた。
「お、今日はきてるな」
俺は近づいて、声をかける。

「おっちゃん、昨日は休みだったんか?」
パチンコを休むっていうのも、
なんだかパチンコが仕事みたいな感じがして変だが、
俺は普通に仕事のようにも感じていたので、
何もおかしくはない。
金もからむし。

おっちゃんに話しかけても、
反応がなかった。
じっと台をにらんでいる。

よく見ると、
パチンコ台のハンドルを握っていたが、
たまがでていない。

お金をいれてないようだった。

「どうしたんおっちゃん、
すぶりでもしてるんか?」

俺はそんな軽口をたたく。
だがおっちゃんは何も反応しなかった。

どうしたんだろ。
そう思ったが、まあ特に気にしなかった。

いらついてて無視されただけかもしれんし、
話したくない気分だったのかもしれんし。
俺はその日も適当にうって帰った。
ちなみに負けた。
帰るときにはおっちゃんもいなくなってた。

次の日も、俺はいつものようにパチンコ屋に向かった。
店内に入ると、また例のおっちゃんが台に座っていた。
昨日と同じように、お金を入れずにじっと台を見つめている。

「おっちゃん、どうしたんだよ。体調でも悪いのか?」
俺は再び声をかけたが、やはり返事はない。
おっちゃんの目は虚ろで、まるで俺の存在に気づいていないようだ。
不審に思いながらも、俺は自分の台に座って打ち始めた。

その日も、俺は負けた。
イライラしながらパチンコ屋を出ると、ふと昨日のおっちゃんのことが気になった。
「もしかして、おっちゃんに何かあったのかな…。」
そう思いながらも、俺はそのまま家路についた。

翌日、俺がパチンコ屋に行くと、入口に人が集まっていた。
店員と客が話し込んでいる。
俺は気になって
「なんかあったんすか?」
と聞いてみた。

「いつも来てるおっちゃんいるじゃん?
あの人が亡くなってたらしい」

「え? まじ……?」
俺は愕然とした。
まさか、おっちゃんが……。
客の噂によると、おっちゃんはパチンコで借金を抱え、
返済の目処が立たなくなったらしい。
もういやになってそのまま、やけになって……という感じだそうだ。

俺はおっちゃんが亡くなったことで、
気落ちしていると、
客の一人が、
「驚きだよな。三日くらい放置発見されなかったから、
大変だったらしいし」
といった。

「え? 三日?」
俺は昨日とおととい、
おっちゃんが台に座っていたとこを見ている。

「でも、おっちゃん、昨日来てなかった?」
「え? いや、来てないだろ、
三日前から来てなかったじゃん」
客はみんなそういった。

俺は混乱した。
自〇したというおっちゃんが、なぜパチンコ屋にいたのか。
しかも、台に座っていながら、一切お金を入れていなかった。

「まさか、おっちゃんの霊だったのか……?」
俺の見間違いかもしれなかったが。

でもおっちゃんだったとすると、
未練があったんだろうか。

「死んでも打ちにくるくらいなら、
死ななきゃよかったのによ……」

俺は誰に聞こえるでもなくぼそっとつぶやく。
それにどうして俺にだけ見えていたのか。
結構話してたから、
俺にだけ見えてたのかな。

分からない。
俺の見間違いだったかも。

それから、
俺はパチンコに行く気がしなくなって、
もう何年もパチンコにはいってない。

全然勝てなくて嫌になったし、
それに、おっちゃんのことを思い出してしまって、
当たりを引いても楽しめなくなったからだ。

パチンコ屋の前を通ったりすると、
ふと思い出したりする俺の思い出話でした。

タイトルとURLをコピーしました