私は、ネット通販でよく本を買います。
書店までいくのがめんどい。書店までいっても売ってない場合がある。
電子書籍はいまいちもってない。て感じの理由で。
そんなわけで先日もアマ〇ンで本を買ったんですよ。ちょっと話題になってるノンフィクションの本です。
それで今日になって届いたわけなんですが、どうも買ったものと違うっぽいんですよね。
ていうか明らかにちがう。
届いた本は、私が注文したノンフィクションの本とは明らかに異なっていました。表紙は古びた革張りで、タイトルは聞いたこともない奇妙な言葉で書かれていました。著者名も見覚えがありません。
見覚えがないっていうか読めない。記号みたいな文字でした。
〇とか▽が組み合わさってるような。
「間違った本注文しちゃった?」
と思い、アマ〇ンのサイトを確認しましたが、注文履歴には間違いなく私が注文した本が記録されていました。
「業者が詰める本まちがったんかなー」
そう思って、注文するときは確認しませんでしたが、
業者の名前を見ました。アマ〇ン公式ではなくて、見たことない業者でした。それはアルファベット表記の業者だったんですが、
「ん、ぐい、あふ」
っていう読み方になるような変な名前でした。
ちゅうかかどっかの変な業者から買っちゃったかなー?と思って、
なんとか返品しようとメール送ったり手続きを進めることにしました。すごくめんどいけど、
いらない本もってたって仕方ないし、何より金がもったいない。
「ていうか、何の本なんだろ?」
そういえば、ほんの中身を見ていないことに気づきました。
私は、よけてあった本を手に取ってみます。
革張りの凝った装丁で、すごく高級そうなつくりでした。
普通に印刷所で製本されたようなものじゃない気がします。
私は、返品手続きを途中でやめておくことにしました。
「ひょっとして、これって結構高い本なのでは?」
ゲンキンな考えというか、私が買う予定だった本よりも、明らかに値段が高そうというか。
そもそも、古書として、プレミアでもついてるんじゃないかみたいな、市販に流通している本とは違うように見えたんです。
金額的に損をしてないなら、業者に連絡しなくてもいいんじゃ?
そう思い始めました。
そもそも、業者が間違えたものです。
黙って持っておいても、私は悪くないんじゃ?そうだ、金を払って本が届いた。その本が注文したものと違ってた。
こっちが問題なければそれでいいのでは?そう思ってしまいました。
私が書いたかった本は、また別で注文すればいいし。
いくらでも手に入る。
でも、この本はきっとどこにでも売ってあるものじゃない。私はレアなものを手に入れた感覚でちょっと興奮してきていました。
「どんな内容なのかなー?」
私は本の中身を見てみます。
その本は目次もなく、いきなり本文というか、
横書きの文章が書いてありました。1行目を見て、
私は驚きます。
「〇〇、、年、、月、、日に生まれる。」
私の名前と生年月日が書いてありました。
「え?なんで?」
呆けた声がでました。たまたま私と同じ名前の人物が主人公の物語なのか?
いや、そんなわけない。
とすると、この本は私のことが書いてある?
混乱しながらも、私は次のページを開きました。
そこには、私の幼少期の出来事が驚くほど詳細に書かれていました。
私が初めて自転車に乗れるようになった日、親友と喧嘩をした日、家族旅行で訪れた場所…。
まるで、私の人生を誰かが観察していたかのようでした。
読み進めていくと、過去の出来事じゃなく、あるページから今の日付を超えていることがわかりました。未来の出来事も書いてあるようです。
ページをめくるたびに、私の人生のあらゆる出来事が時系列に沿って記されていきました。
今の職場をやめること、転職先…。
そして、私が結婚する相手の名前まで。
本当なのか? これ。過去について書いてあることは、
合っている。未来の記述も合ってる?
「こわ……なんなんだこの本?」
未来のことも書いてあるとすると気になることを思いつきました。
「最後のページはどうなってるんだろう?」
私について書いてある物語とすれば、
最後に書いてあるのは私の最後?最後のページを見てみると、
「脳梗塞で死亡。〇〇年、、月、日。」
という最後。今から数十年後に死ぬようです。
「うーん、まあ幸せな終わり方かも」
結婚をしてそれなりに年を取って死ぬ。まあ普通というか、満足いく最後だなと。気が付けば、もう深夜になっていました。
「明日も仕事だし、もうねよ」
不思議な本を見つけた興奮もありましたが、その日は、連勤つづきで疲れていました。
それにありえないことすぎて、どうすればいいかもわからなかった。
私は眠ることにして、翌日考えることにしました。
翌日、私は仕事に行きました。
あの本なのか、日記なのか、物語なのか、によると、今の職場はあと1か月くらいでやめることになるみたいです。
「本当かなー?」
今の職場に特に不満はありません。できるならずっと続けていたいと思っていました。
その日の業務を終えて、私は家に帰りました。
あの本をもう一回見てみよう。なんで仕事をやめることになるのか、
細かく書いてないかな?
そう思って、確かめてみようと考えたんです。昨日はたしか寝る前に、本を布団の横に置いてあったはずでした。
でも、どこにも見つからなかったんです。
「あれ? 変なとこにやっちゃったかな?」
本を探して、布団をめくってみたりもしましたが、
どこにもありません。結局、いえじゅうを探してみましたが、本は見つかりませんでした。
「……夢でもみてたんかなー」
私はそう思って、気にしないことにしました。元々ほしかったノンフィクションの本も別に購入して、
あの本の代金は損してしまったけど、不思議な体験したし、まあいいかと思ったんです。
それから、一か月、私が仕事をやめると書いてあった日になりました。
その日もいつもの業務と何も変わりませんでした。
何か不祥事があって、会社がかたむくわけでもなし。いつも通りに業務を終えていつも通りに帰りました。
クビになることもなく。
「やっぱただの夢? なんてことなかったな」
あの本の記述と違う未来になりました。翌日も会社に出勤して、
業務を終えて帰宅しました。
そして、ふと布団に目をやると、すぐ横にあの本が置いてありました。
革で装丁された本です。
「え? なんで?」
私は思わず手に取って本を見てみます。今日の日付を見てみます。
仕事が終わって帰宅。何もなく無事終わる。
そんなことが書いてありました。
「あれ?」
そこで私は以前と違うことに気づきます。その日付のページから残りのページ数。
いうなれば、私の最後の日までが少ないんです。
とても、あと数十年分が書かれているとは思えません。
私は最後の日付を見ます。1週間後の日付。
死因:交通事故
「うわあああ」
思わず、本を投げ捨ててしまいます。
私は、震える手で床に落ちた本を拾い上げました。目の前の現実から逃げ出したい気持ちでいっぱいでしたが、
どうしても本の内容が頭から離れません。
「これは、何かの間違いだ。そう、きっと誰かの悪質な悪戯に違いない…」
必死にそう自分に言い聞かせましたが、本に書かれていたこれまでの出来事があまりにも正確で、私の心には疑念が拭えませんでした。
「どうして? 仕事をやめてないから未来が変わった?」
私はそれから数日間をおびえて暮らし、そして、事故の起こる日付の当日。外出を控え、家に閉じこもることに決めました。
「そうだ、転職のことも実際には起こっていない。この事故だって、この場所にいかなければ怒らないはず」
私はそう思って、家でゲームをしたり気を紛らわせてました。
「大丈夫、大丈夫」
そのまま、動かず、
事故の時間が過ぎるのを待ちました。私が部屋を見回すと、
またあの本が置いてあります。私は最初の方から見て行って、
現在の日付のページの先をみないように、本をめくっていきます。
今日の日付のページには、部屋で引きこもって過ごしていたことがかいてありました。
そこから残りのページ数を見てみます。最初に見たときのように、
まだページ数が残っているようでした。
「大丈夫、まだ私の日記は続いてる」
私はいつのまにかこの本のことを全く疑っていませんでした。
そして、続きを確認しようとしたところで、手を止めました。もし、書いてあることと別なことをしたら?また中身が変わって、早く終わってしまうんじゃ?どうなるかを確認して、回避する方法を調べるべきなのかもしれませんが、私はもうこの本を見ることが怖くなっていました。
未来の記述におびえるくらいなら、何もしらないままでいたい。
この本から逃げ出したくなりました。私はこの本を捨てることにしました。
古本屋に売ってしまうよりも、誰も拾えないようにしたほうがいい気がしたので、人の来ない空き地を探して、そこで燃やしてしまいました。
ふーっと一息ついて、
「もう忘れよう。こんな本、しらない」
私はそう呟いて、本が燃えたことを確認して、その場をさります。
それから特に何も起こっていません。
今思えば、考えすぎだったのかも。もしくは夢かなにかと勘違いしていたとか?
いや、さすがにそこまでぼんやりとした記憶でもない。
ともかく、今は以前と変わらない日々を送れています。
仕事も変わることもないし。
そういえば、ほんの中で結婚していた日付を超えても独身のままですけど。どんな人と結婚するかも確認してなかった。それくらいは見とけばよかったかも。
いや、もうやめとこう。考えないようにしよう。
アマ〇ンとかの通販サイトも、誰でも参入できるようになって、
いろんな業者が使ってるんだろなーって思うと、ひとつくらい変な業者が混じってることもあるのかなとか。
私の体験した不思議な出来事でした。